「節約したいなら自炊しましょう」。食費の話になると、必ずと言っていいほど出てくる言葉です。でも、それができたら苦労していない、という人も多いのではないでしょうか。
料理が得意じゃない。仕事で疲れて帰ってきて、そこから台所に立つ気力がない。キッチンが狭くて作業しづらい。そもそも献立を考えるのが苦痛——。理由はいろいろですが、「自炊が続かない自分」を責めて、食費節約そのものをあきらめてしまう人は少なくありません。
この記事でお伝えしたいのは、食費を下げるために、無理して料理上手になる必要はないということです。完璧な自炊を目指すのではなく、「食費が上がってしまう行動」を少し減らすだけでも、支出は変わります。料理が苦手なままでもできる、現実的なやり方を順番に見ていきましょう。
自炊が苦手でも、食費は下げられる
まず知っておいてほしいのは、食費が高くなる原因は「自炊していないこと」だけではない、ということです。
食費がふくらむ大きな要因は、たとえばこんな行動です。
- なんとなくコンビニに寄って、ついでに何か買う
- 疲れていて、毎晩のように外食やデリバリーに頼る
- 飲み物をその都度ペットボトルで買う
- 安いと思って買ったものを、結局使い切れずに捨てる
これらは「料理ができないから」起きているわけではありません。買い方や習慣のクセから起きていることがほとんどです。つまり、料理スキルを上げなくても、ここを少し見直すだけで食費は下がる余地があるということです。
参考までに、総務省の家計調査(2025年)では、一人暮らし世帯の食費は1か月あたりおおよそ4.4万円台が平均とされています(年齢や地域、外食の多さで差が大きく、あくまで目安です)。「自分の食費が高すぎるのでは」と不安になる必要はありません。大事なのは平均との比較ではなく、自分の中でムダに上がっている部分を見つけることです。
まずは「全部作る」より「買い方を変える」
自炊が苦手な人がいきなり「毎食自炊」を目指すと、たいてい三日でしんどくなります。そこで挫折して「やっぱり自分には無理だ」となるくらいなら、最初から作る量を増やすのではなく、買い方を変えるところから始めるのがおすすめです。
食費への向き合い方は、ざっくり3段階に分けて考えられます。自分がどこから始められそうか、見てみてください。
| アプローチ | 内容 | 向いている人 | ハードル |
|---|---|---|---|
| 全部作る | 食材を買って毎食調理する | 料理が好き・時間がある | 高い |
| 一部だけ作る | ご飯だけ炊く、メインは惣菜など | 少しは台所に立てる | 中くらい |
| 買い方だけ変える | 調理はほぼせず、買うものと頻度を見直す | 料理がとにかく苦手・疲れている | 低い |
節約というと、つい一番左の「全部作る」をイメージしがちです。でも、料理が苦手な人にとって現実的なのは、右の2つです。「買い方だけ変える」から始めて、余裕が出たら少しずつ左に寄せていくくらいで十分です。最初から完璧を目指さないことが、続けるコツになります。
ご飯だけ炊く、という小さな自炊
「全部は無理でも、これくらいなら」という人に試してほしいのが、ご飯だけ炊くという方法です。
たとえば、家で炊いたご飯に冷凍食品を組み合わせると、次のようなイメージになります。
| 内容 | ざっくり計算 | 目安額 |
|---|---|---|
| 家で炊いたご飯 約180g | 米5kgを約5,000円として計算 | 約80円 |
| 冷凍から揚げ 約100g | 350gで約400円の商品例から計算 | 約120円 |
| ご飯+冷凍から揚げ | 約80円+約120円 | 約200円 |
| 千切りキャベツを足す | 1袋120円前後の商品例 | 約320円前後 |
コンビニ弁当は商品によって差がありますが、税込で約460〜700円前後の商品もあります。毎回お弁当を丸ごと買うより、「ご飯だけ家で用意する」だけでも、選択肢はかなり増えます。
※価格は商品・地域・時期で変わります。あくまで一例として見てください。
ご飯さえ家にあれば、おかずは惣菜や冷凍食品にしても、外食やコンビニ弁当を丸ごと買うよりは安くなりやすいです。レトルトカレーや缶詰、卵を足すだけでも一食になります。炊飯器に入れてスイッチを押すだけなので、「料理」と身構えるほどのことではありません。
慣れてきたら、まとめて炊いて1食ずつ冷凍しておくと、忙しい日でもレンジで温めるだけで済みます。このときに冷凍保存容器があると小分けがラクになりますが、まずはラップや手持ちの容器で十分です。必要だと感じたら補助的にそろえる、くらいで構いません。
これは立派な「一部だけ作る」スタイルです。全部作らなくても、ご飯という土台が家にあるだけで、食費の選択肢はぐっと増えます。
冷凍食品・惣菜・カット野菜を「悪者」にしない
節約の記事では、冷凍食品やスーパーの惣菜が「割高」「手抜き」のように扱われることがあります。でも、料理が苦手な人にとっては、これらはむしろ強い味方です。
判断の基準はシンプルです。比べる相手を外食・デリバリー・コンビニ弁当にすること。
- 外食・デリバリー → スーパーの惣菜やお弁当のほうが安いことが多い
- コンビニ弁当 → 同じ価格帯でも、冷凍食品+ご飯のほうが量を確保しやすい
- カット野菜 → 丸ごと買って使い切れず捨てるより、ムダが出にくい
「自炊と比べたら高い」のは事実かもしれません。でも、自炊が続かないなら、その比較にあまり意味はありません。続けられる現実的な選択肢の中で、いちばん安いものを選ぶ。これで十分です。
カット野菜は割高に見えますが、一人暮らしで野菜を丸ごと買って腐らせてしまうくらいなら、結果的に安く済むこともあります。「捨てる食材を減らす」のも、立派な節約です。
コンビニはゼロにしなくていい——「頻度」を決める
食費を上げやすい代表格がコンビニです。だからといって「コンビニ禁止」と決めると、たいてい反動が来ます。
おすすめは、ゼロにするのではなく回数を決めることです。
たとえば、こんな決め方です。
- コンビニに寄るのは週3回まで
- 寄るときは「目的のものだけ」レジに持っていく
- 仕事帰りの「なんとなく寄り」をやめる
コンビニで地味に効くのが、ついで買いです。お茶を買うつもりが、ついスイーツや新作のお菓子も……というあれです。一回数百円でも、毎日続けば月に数千円になります。回数と「買うもの」を先に決めておくだけで、この上乗せをかなり防げます。
完全にやめるのではなく、付き合い方を整える。これなら料理が苦手でも、今日から実行できます。
飲み物代を見直す
意外と見落とされがちなのが、飲み物代です。
ペットボトルのお茶や缶コーヒーを、1日に2〜3本その都度買っていると、それだけで月に数千円になります。ここは料理スキルと関係なく、多くの人が見直しやすい部分です。
やり方は単純で、水筒やマイボトルを持ち歩くだけです。家でお茶を作って入れていくのが理想ですが、面倒なら、ペットボトルを家でまとめ買いして1本持っていくだけでも、コンビニや自販機で都度買うより安くなります。
ペットボトルや缶コーヒーは、1回ごとの金額は小さく見えます。でも、平日だけでも毎日買うと月単位では意外と大きくなります。
| 買い方 | 1本の目安 | 平日20日で計算 | 1日2本なら |
|---|---|---|---|
| ペットボトル飲料 | 約116〜118円 | 約2,300〜2,400円 | 約4,600〜4,700円 |
| 缶コーヒー | 約132円 | 約2,640円 | 約5,280円 |
| 安めのPB飲料 | 約73円 | 約1,460円 | 約2,920円 |
毎日コンビニや自販機で買っているなら、水筒を使う、家でまとめ買いした飲み物を持っていく、1日2本を1本に減らすだけでも、月の支出は変わります。
※価格は商品・店舗・地域で変わります。あくまで目安です。
水筒は最初に少しお金がかかりますが、毎日使えば回収しやすい買い物です。とはいえ「節約のために必ず買うべき」というものでもありません。手元にあるボトルや空きペットボトルから始めて、続きそうなら専用のものを用意する、で十分です。
外食を「減らす」より「単価を下げる」
「外食を完全にやめる」は、自炊が苦手な人にとってハードルが高すぎます。やめられずに自己嫌悪……となるくらいなら、外食はする前提で、1回の単価を下げるほうが現実的です。
具体的には、こんな工夫があります。
- 居酒屋やカフェより、定食屋・チェーン店を選ぶ
- ランチタイムを活用する(同じ店でも夜より安いことが多い)
- ドリンクバーやトッピングなど、追加で増えがちなものを意識する
- クーポンやアプリの割引を、使える範囲で使う
外食の回数を無理に減らすと、ストレスがたまって別のところで使ってしまうこともあります。**「外食はしてもいい。ただし高いところに頻繁に行かない」**くらいの緩さのほうが、結果的に続きます。
料理が苦手な人ほど、買い物リストが効く

ここまでの工夫を支える土台が、買い物リストです。料理が得意な人より、苦手な人にこそ効きます。
理由はシンプルで、料理が苦手な人は「何を買えばいいか」が決まっていないことが多く、店内で目についたものを次々カゴに入れてしまいがちだからです。これがムダ買いと食材の使い残しを生みます。
完璧なリストでなくて構いません。スマホのメモに、
- 今週食べる予定のもの(ご飯、惣菜、冷凍食品など)
- 切らしている日用品
をざっくり書いておくだけで、「目的のもの以外を買わない」状態に近づきます。在庫を把握しておけば、同じものを二重に買う失敗も減ります。
買い物リストは、お金もスキルもいりません。今日のメモから始められる、始めやすい節約です。
自炊が苦手な人の1週間イメージ
「で、結局どう過ごせばいいの?」という方のために、料理をほとんどしない前提の1週間例を挙げておきます。あくまで一例なので、自分のペースに合わせて崩してください。
| 曜日 | 夜ごはんの例 | ポイント |
|---|---|---|
| 月 | ご飯(冷凍ストック)+ 惣菜 | 週末に炊いて冷凍したご飯を活用 |
| 火 | 冷凍食品 + カット野菜のサラダ | 包丁を使わない日 |
| 水 | 定食屋でランチ多め、夜は軽く | 外食は単価の低い店で |
| 木 | ご飯 + 缶詰・レトルト | 買い置きで乗り切る |
| 金 | 好きな外食 or デリバリー | あえて息抜きの日にする |
| 土 | ご飯をまとめて炊いて冷凍 | 来週の土台づくり |
| 日 | 惣菜 + カット野菜 | 買い物リストで翌週分を確保 |
ポイントは、完璧を目指さず、息抜きの日を最初から組み込んでいることです。「金曜は好きなものを食べる」と決めておけば、平日の節約も続けやすくなります。
注意:栄養や体調を削る節約はしない

最後に、いちばん大事な注意点です。
節約に意識が向きすぎると、「1食100円」のような極端な目標に走ってしまうことがあります。でも、食事は体をつくる土台です。栄養が偏ったり、量を減らしすぎて体調を崩したりすると、医療費や仕事への影響のほうが高くつくこともあります。
食費節約の目的は、苦しくなることではなく、お金の不安を少しでも減らすことです。野菜や卵、たんぱく質など、最低限のバランスは保ちながら、「ムダに上がっている部分」を減らす。これくらいの感覚がちょうどいいです。
体調や持病、生活リズムには個人差があります。「これ以上減らすと続かない」「体調に響く」と感じたら、それは下げすぎのサインです。無理のない範囲で続けることを優先してください。
まとめ:完璧な自炊より、上がる行動を減らす
自炊が苦手でも、食費は下げられます。大事なのは、料理上手になることではなく、食費が上がる行動を少しずつ減らすことでした。
今日からできることを、もう一度整理しておきます。
- 「全部作る」より、まずは「買い方を変える」から始める
- ご飯だけ炊いて、おかずは惣菜・冷凍食品で構わない
- 冷凍食品・惣菜・カット野菜は、外食と比べれば心強い味方
- コンビニはゼロにせず、回数を決める
- 飲み物は水筒やまとめ買いで都度買いを減らす
- 外食は減らすより、1回の単価を下げる
- 買い物リストで「目的外の買い物」を防ぐ
- 栄養や体調を削る節約はしない
全部を一度にやる必要はありません。この中から「これならできそう」と思えるものを、1つか2つ選んで試してみてください。続けられたものが、あなたに合った節約です。
食費を整えられたら、次は家計全体の流れを見てみると、お金の不安はさらに小さくなります。家計全体を立て直す手順はこちら、そして食費節約の全体像はこちらから、自分のペースで進めてみてください。

